2023年8月のTHI推移(北海道)

  酪農総合研究所では北里大学との共同プロジェクトを実施しており、全国の酪農家にご協力いただき、牛舎に通信型の温湿度センサー端末を設置して、THIをモニターしている。

 THIとストレスの関係は、

   72以下(ストレス無し)、73-78(軽度)、79-88(強度)、89以上(超強度)

という基準で判断している。

全国の観測地点のTHIデータモニタリング結果を、今後の暑熱対策の参考として情報提供していく。 

 さて、2023年8月のTHIがどんな推移を示したのか、まとめたので紹介する。

 

 今月は、宮崎・秋田編と北海道編とに分割してお伝えしているが、これからは北海道編である。

 全国の気象概況は、宮崎・秋田編に記載しているので参照してもらいたい。

 

 さて、北海道内THI測定地点での8月のTHI推移は、

大樹町の8月の平均気温は22.3℃(平年差+3.5℃)でかなり高く、降水量
は平年比79%と少なかった。
大樹町の平均THIを見ると暑熱ストレスの無い日は約10日程度、最低THIは
73を超える日が多く、概ね軽度ストレスが継続していた。
ただし月後半には最高THIが80を超える日が多く、日中は強い暑熱ストレス
があったものと考えられる。

昨年との比較では、月初と後半とで平均THIがかなり上昇している。
やはり今年は、昨年よりもはるかに猛暑であったことが分かる。




標茶町の8月の平均気温は21.9℃(平年差+3.5℃)でかなり高く、降水量
平年比73%と少なかった。
大樹町同様に標茶町でも、平均THIを見ると暑熱ストレスの無い日は約10日
程度、最低THIは73を超える日が多く、概ね軽度ストレスが継続していた。
また、月後半には最高THIが80を超える日が多く、日中は強い暑熱ストレス
があったものと考えられる。


昨年との比較では、月初と後半とで平均THIがかなり上昇している。
大樹町と同様に今年は、昨年よりもはるかに猛暑であったことが分かる。


興部町の8月の平均気温は21.7℃(平年差+2.9℃)でかなり高く、降水量
平年比177%とかなり多かった。
興部町では、上旬後半から中旬前半にかけてTHIが低く推移しストレスの
少ない日が続いたものと思われる。しかし、道内他地域と同様に月後半には
気温が上昇し、軽度ストレスを受ける日が続いた。


昨年との比較では、月初と後半とで平均THIがかなり上昇している。
道内他地域と同様に、今月は昨年同月よりもはるかに猛暑であったことが
分かる。

 
 道内3地点のTHIデータ推移を見ると、やはり今年は猛暑であったことが見てとれる。
 大樹町・標茶町では月後半には平均THIが強度に近い軽度ストレスを示し、最高THIは連日強度ストレス状態であることを示している。また興部町でも月後半には連日暑熱ストレスが継続していたことが分かる。9月4日ホクレンが公表した8月下旬の受託乳量は前年比10.3%減少であった。北海道全体でいかに猛暑であったかが窺い知れる。
 今年は統計開始以降最高の猛暑ということだが、今後この傾向が継続するとなると暑熱対策を根本的に再考する時期にきていると思われる。寒冷対策と同様、本格的な猛暑対策も必要になってきた。現状、生乳生産コストが上昇しているのに加え、更なる設備投資も必要となり、酪農経営が益々厳しくなってくる。
 このような自然環境変化に対応する必要があっても、将来的に持続可能な酪農経営とするためには生乳生産コストを維持・低下させていかなければならない。
 その一つとして、自給飼料の生産が可能な地域では、良質で十分な量の自給飼料を生産するための草地の維持・更新や植生改善などの取組みが何よりも求められるのではないか。

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