2023年10月のTHI推移

  酪農総合研究所では北里大学との共同プロジェクトを実施しており、全国の酪農家にご協力いただき、牛舎に通信型の温湿度センサー端末を設置して、THIをモニターしている。

 THIとストレスの関係は、

   72以下(ストレス無し)、73-78(軽度)、79-88(強度)、89以上(超強度)

という基準で判断している。

全国の観測地点のTHIデータモニタリング結果を、今後の暑熱対策の参考として情報提供していく。 

 さて、2023年10月のTHIがどんな推移を示したのか、まとめたので紹介する。


その前に、全国の気象概況を振り返ることにしよう。

 気象庁が公表した2023年10月の天候によると、気温は北日本でかなり高く、沖縄・奄美で高かった。主な気象観測地点である帯広・釧路・根室では月平均気温の高い方からの 1 位を更新し、小樽・札幌では月平均気温の高い方からの 1 位タイを記録した。降水量は西日本日本海側と沖縄・奄美でかなり少なく、西日本太平洋側で少なかった一方、北・東日本日本海側で多くなった。日照時間は全国的に多く、特に北・西日本日本海側と北・東・西日本太平洋側でかなり多かった。


 さて、THI測定地点での10月のTHI推移は、

宮崎市の10月平均気温は19.3℃(平年差-0.7℃)で平年並、降水量は平年と比べて
かなり少なかった。月始めに最高THIが72を超える日が数日あったが、その後は
ストレスの無い状態が継続したものと思われる


秋田市の10月平均気温は15.2℃(平年差+0.7℃)と高く、降水量平年比164
とかなり多かった。月の始めに2回ほど最高THIが72を超えるがあったものの、
ストレスの無い状態が継続したものと思われる


大樹町の10月の平均気温は10.6℃(平年差+1.2℃)でかなり高く、降水量は
平年比99%と平年並。今月は暑熱ストレスの無い状態であった。


標茶町の10月の平均気温は10.0℃(平年差+1.1℃)でかなり高く、降水量
平年比126%と多かった。今月は暑熱ストレスの無い状態であった。


興部町の10月の平均気温は10.9℃(平年差+1.6℃)でかなり高く、降水量
平年比131%と多かった。今月は暑熱ストレスの無い状態であった。

 
 これらの結果を見ると、昨年と同様に10月になると全国的に暑熱ストレスの影響が殆ど無い状態となる。そのため、今月をもって今年度のTHI推移実績報告は終了する。
次年度もまた、気温が上昇する前の4月より、まず府県の実績報告から再開することとしたい。
 
 今年は、統計開始以降最高の猛暑であったということだが、これからは、このような異常気象があたりまえになってくるというのが専門家の意見のようだ。
 今後この傾向が継続するとなると、暑熱対策を根本的に再考しなければならない時期にきていると思われる。北海道では、寒冷対策と同様に本格的な猛暑対策も必要になってきた。 
 現状、購入飼料費高騰を主因とする生乳生産コストの上昇により経営が厳しくなっていることに加え、更なる設備投資も必要となる。このような自然環境変化に対応する必要があっても、将来的に持続可能な酪農経営とするためには、やはり生乳生産コストを維持・低下させていかなければならないだろう。
 その一つとして、自給飼料の生産が可能な地域では、良質で十分な量の自給飼料を生産するための草地の維持・更新や植生改善などの取組みが何よりも求められるのではないか。

 酪農家の皆さんには、今年報告した結果を、次年度の暑熱対策についての判断材料のひとつとして見ていただければ幸いである。

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