2023年7月のTHI推移

 酪農総合研究所では北里大学との共同プロジェクトを実施しており、全国の酪農家にご協力いただき、牛舎に通信型の温湿度センサー端末を設置して、THIをモニターしている。

 THIとストレスの関係は、

   72以下(ストレス無し)、73-78(軽度)、79-88(強度)、89以上(超強度)

という基準で判断している。

全国の観測地点のTHIデータモニタリング結果を、今後の暑熱対策の参考として情報提供していく。 

 さて、2023年7月のTHIがどんな推移を示したのか、まとめたので紹介する。


その前に、全国の気象概況を振り返ることにしよう。

 気象庁が公表した2023年7月の天候によると、気温は北・東日本でかなり高く、西日本と沖縄・奄美で高かった。降水量は北・東・西日本太平洋側で少なかった。日照時間は北・東日本太平洋側と東日本日本海側でかなり多く、北日本日本海側と西日本太平洋側で多かった。1946 年の統計開始以降、北日本では7月として1位の高温となった。


 さて、THI測定地点での7月のTHI推移は、

宮崎市の7月平均気温は28.2℃(平年差+0.9℃)で高かった、降水量は平年比
99と平年並。上旬後半以降、平均THIが80前後、最高THIが85示すように
なり強度のストレスを受けていたと考えられる。梅雨時期開始前から最大の暑熱
対策を実施できるよう準備しておかなければならないことが分かる。

秋田市の7月平均気温は24.9℃(平年差+1.5℃)でかなり高く、降水量
平年比213%とかなり多かった。上旬から最高THIが80を超える日があり、
下旬には平均THIでも80程度で推移した。梅雨とともに暑熱ストレスが大きく
なっていることが分かる。早め早めの暑熱対策の準備が必要だ。

大樹町の隣の広尾町の7月の平均気温は21.0℃(平年差+4.4℃)でかなり高く、
降水量は平年比59%と少なかった。
大樹町では、上旬から中旬にかけては日中に軽度ストレスがある程度であったが、
下旬には気温が急上昇して平均THIでも80近くを示すようになり、やや強い
ストレスがあったものと見られる。

標茶町の隣の釧路市の7月の平均気温は20.0℃(平年差+3.9℃)でかなり高く、
降水量平年比94%と平年並だった。
大樹町同様に標茶町でも、上旬から中旬にかけては日中に軽度のストレスがある
程度であったが、下旬には気温が急上昇して最高THIが80を超えるようになり、
強い~軽度のストレスがあったと見られる。

興部町の隣の雄武町の7月の平均気温は19.5℃(平年差+3.0℃)でかなり高く、
降水量平年比102%と平年並。
道内他地区と同様に上旬から中旬にかけては日中に軽度のストレスがあり、下旬
には気温が急上昇し最高THIが80を超え、やや強いストレスがあった

 今年も平年と比べて高い気温で推移しているが、特に北海道や東北地方では記録的な高温が続いており、人にとっても乳牛にとっても厳しい夏を迎えている。このところ連日、人の熱中症のニュースが報道されているのと同様、乳牛にも影響が出てきている。
 7月下旬のホクレン受託乳量が前年比5.8%減となり、今年度最大の落ち込みとなった。生産抑制中とはいえ、連日の猛暑による影響が大きいと考えられている。特に道北・道東地区での落ち込みが大きく、夜の気温・湿度が高いことが乳牛にダメージを与えているようだ。
 
これからは、異常気象があたりまえになってくるというのが専門家の意見のようだ。
猛暑の影響を受けることが少なかった北海道でも、これからは猛暑に備えるためのしっかりとした対策が必須であると考えられる。




 

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